終末指向性の感情論
霧慧未央

季節外れの帰省で乗りこんだ地下鉄は
死んだ目で立ち尽くすひとたちであふれていた
おそろいのイヤホンから漏れるうた
あてもなく
うわんうわん輻輳している
そう言えば
こえを失ったんだったわ
くだんねえなって吐き捨てることすら叶わず
"しかたないね"って繰り返してたら、めでたく社会となかよくしてました
でもここからさきの空白に埋没することさえ叶わず
うわんうわん輻輳しているノイズのなかからあなたのこえを探す
それは人間というかみさまを殺すうた
そのあとに続くことばは消え失せる
そんな世界の終わりを待ち焦がれている


自由詩 終末指向性の感情論 Copyright 霧慧未央 2016-08-23 20:47:59
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