証し
もっぷ

演奏会の時には一番後ろの椅子のままで私は終わりました
この白髪はさぞ目立ったことでしょう
家族たちはいったいこのみすぼらしさをどう見ていたことでしょう
最後の日、それなのに新しい靴を私にプレゼントしてくれて
会場で見えるわけもない靴ですがなぜだかすこし
私の弾く音色も誇り高く響いた気がして
客席の最前列では家族の皆が首を傾けるだけ傾けて
……アンコールも終わり私は仲間たちからの思わぬほどの
持ち帰れないほどの祝福と労いを受けて
もちろん、
真新しい靴にも気がついてくれていてね
バイオリン弾きは彼の楽器を大切に抱きしめながら

彼の故郷の誠実は
やさしく見つめてやまない証しにと
風に みずうみに漣をと



自由詩 証し Copyright もっぷ 2016-08-23 01:18:14
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