鹿へ
もっぷ
初秋の朝、風が窓辺に腰掛けて静かに凪いでいる
彼の故郷のみずうみは人知れず朝陽に煌く
みずうみの近くで 野葡萄の黒い実が艶めきを増す
いまだみどりの樹に 帰る渡りが「ありがとう」を告げている
木梢が気持ちを伝え返す
みずうみの色彩が移ろう
凪いでいた窓辺では風が翼を そろそろと
かの野葡萄の想いとしては
みずうみも手伝って
陽光も味方し
君は命をつなぐべきだと
燦燦と あるべき道を生きて来たたましいへ
脈脈と 息づく謙虚な血潮を
あるべき道をさらに行きなさいと指示し
風に みずうみに漣をと