ひとつ しめす
木立 悟
暗がりを映せば鳴る目の水の
緑に散っては集まる姿
標を失い かたちを失い
かがやきながらすぎゆく姿
階段の前に
すっくと立つ影に
目が触れ 揺れる
滾ることのない心をはばたかせて
多くの内の多くではなく
ひとつの変わらぬ雨滴として
空の底にまたたくもの
音から音へ渡されるものを見る
蒼と水
海がはじまり 終わる場所
曇のなかの鉄が手まねく
空につづく足跡の先
けだものがけだものを咬み
光が降る
黒煙の内から現われるむらさき
長く細い指となり
滴の行方を指し示す
自由詩
ひとつ しめす
Copyright
木立 悟
2016-08-19 21:27:06
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