詩酔い
葉月 祐

言葉と言葉同士を繋げた
未知の世界への扉が
目の前に
数えきれない程 並んでいる

片っ端から開けてみれば

知らない街の匂いがしたり
見た事も無い景色に息を呑んだり
深い七色の森の中に出たり
感じた事の無い心の海に溺れたり
懐かしい自分と遭遇したり

どこから扉を開けても
驚きや感動は 尽きる事無く
時間も忘れてしまう程
各々の世界に 入り浸ってしまう

  まるで
  自分には描けない
  その人自身の絵を
  見ている様だ

  それは
  自分には奏でられない
  その人だけの音楽を
  聴いている様でもある

  時には
  私の心を揺さぶり
  笑い転げる事もあれば
  涙し、言葉が出ない事もあり

  私の中にも
  そんな言葉があったなら―――と
  思わずにはいられなかったし
  羨まずにはいられなかった

強烈な夕焼けの光で
黒髪が赤く染まる様に
透明な水溜まりに
傘の色がそのまま移る様に
何かの影響を受けて変わっていく

そんな言葉も あるのかもしれない

一度出逢ってしまえば
言葉の持つ引力に強く惹かれて
ハッと気付けばのめり込んでいる
色とりどりの言葉の中に浮かびながら
私は醒めない酔いの海を漂い続けている

詩に酔い
言葉の煌めきや熱に
心奪われながら
声に出来ない思いが溢れた


―――なんとすてきなかんかくだろう―――


この先も酔いは 醒める事は無いだろう
どうか二度と醒めません様にと
願わずにはいられない
どんな酒より愉しく酔えるものに
私は出逢ってしまったらしい





自由詩 詩酔い Copyright 葉月 祐 2016-08-19 15:51:15
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