八月のブランケット
葉月 祐


季節外れのブランケット
雨音の波を 遮断しきれない

少し薄手のブランケット
ほんの少し 体に纏わり付いて

―――午前二時、
雨を受け止める窓硝子は
淡く蒼い夜の色

寒い訳ではない ただ
何かが欠けている気がする
その感覚が ただただ気持ち悪くて
一人では うまくそれと向き合えない


窓硝子を 心を
じわりと 濡らしていく 雨

膜越しに耳に届く雨音の波
脳内に感情のシミが出来るのを感じた


寒い訳ではない
僕の中には どうやら
埋めようも無い過去の穴があいているらしい
ひび割れる様に広がったまま


自分以外の誰に
その穴をどうにか出来ると言うのだろう


今夜はもう 眠れそうにない
今はとにかく眠りたいのに
瞼にも耳にも蓋をして
今すぐにでも眠りたいのに


八月の夜のブランケット
どうしようもできなかった
この孤独の穴を 今だけはどうか塞いでいて

季節外れのブランケット
持て余した感情は もう包みきれない


―――午前三時、
カーテンの隙間から街灯の明かり
打ち付ける雨に濡れた窓硝子は
滑らかに煌めいた


――――――ああ・・・


僕は 長くなるであろう夜を
ひとり
ブランケットの中から覗いている








自由詩 八月のブランケット Copyright 葉月 祐 2016-08-18 21:28:45
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