晩夏
ヒヤシンス
悲しみのヴェールに霧が溶けてこの村に訪れる晩夏が眩しい。
お前と過ごした最後の夏はこのフィルムに焼き付いて時を彩る。
優しさは或る晩の静けさに紛れて、一枚の絵画には音も無い。
描かれたお前に美は永遠で、私の心は途方に暮れる。
奪えなかった私にも神は平等に夜を与えた。
窓越しに眺めた夜空に私は初めて流星を見た。
たった一度だけ見せたお前の涙のようであった。
大きな存在を失った私の心の涙のようでもあった。
愛とはかけがえのないものである。
愛とは奪うべきものである。
愛とは真っすぐに表現するものである。
その晩私はひっそりとした部屋の中で日記を書いた。
お前のヴェールをこれ以上汚さぬように、ひっそりと。
たった一言。・・・喪失、と。