空電歌謡は奈落のまぼろし
高原漣
夏がビー玉に映っている
セミが静けさを連れてくる
氷が爛れるほどの熱がすっと引いてゆく
夕立だろうか?
めきめきと育つ入道雲 遠雷がきこえる
風が稲穂をゆらし
水面を無数の蓮華が埋め尽くすとき
空に隠された夥しい死が
陽炎のむこうに姿をさらす
ノイズだらけの歌が
雨の向こうから流れてくる
奈落のように真っ黒い曲に
やるせない歌詞の挽歌
雀がさえずるのをやめるとき
その歌が代わりにきこえてくるだろう
自由詩
空電歌謡は奈落のまぼろし
Copyright
高原漣
2016-08-17 00:13:20