(なべ)
「ま」の字
ふゆ
まっ白い雲のうかぶ空は
あおじろい怒りの気配
をたたえ そ
の
下を
煮えきらず
あるいていた
手に
侃々とたぎり
鳴る鍋は なく
白い白い
雲は浮かぶのが
「自由」と
ペンキで殴り 描かれ
た ように
かぜでそぎ立ち
おれは
烹烙する/にえたぎる
うつわの中味を気にしたがる
たがる
身を
花よ
菜の花よ
おさえ おさえ
おれは
三十年間同じ値で吊された値札なのだ それなのに
黄ばみ垂れ
三十年間同じ値で吊されたこの値札
(の)
きもちもわからないか
このおとこ!
まっしろい
くも
うかぶ きもちが
吊るされた
かんかんかん、な!
ひとも じんせいも
胆か 呪いの
けふはもう 風邪のこじゃらせ
かかえるほどな 具もないのに
おおきくおおきく
かかえやがる この
乞食野郎、頭陀のあしと腹
がすすむ
冬は過ぎ 春咲き乱れ
侃々と
鍋のおとが耳元で
わめきちらし