少年少女
ただのみきや

遠い夏
街で見かけた少女
名前も
どこに住んでいるかも
知らないで
ただ精一杯
目で追うことしかできずに
それっきり
夢で逢えたらと願いながら
叶う事もなく


今日(四十年後)
傍らを通り過ぎた
あの日の少女によく似ている(気がする)
こんなに腕も脚も首も細いものかと
あらためて感慨深く
大人のように
爪をブルーに塗って
夏休みの顔
振り返らず
見送りながら
《四十年前の少年ならきっと恋をしたはず
そう思うと
何やら楽しくなって
楽しさは
美しい切なさの手を取った


巡り来て
ほんの束の間
そっと繋いでは
すぐに離れて行ってしまう
フォークダンスのように
遥かな恋の黎明
こんな古びた空箱でも開ける度に蘇る
面影と鼓動
日差しの中に隠した秘密





            《少年少女:2016年8月10日》











自由詩 少年少女 Copyright ただのみきや 2016-08-10 20:08:33
notebook Home