Letter

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一枚にまとめられなくて
用意した二枚目の便箋
会えない期間に起きた出来事は 
旅行中に郵便受けに貯まっていた広告のように
整理がつかず   
君に何を伝えるべきかわからないでいる
ボールペンは指先で回って早くしろと急かすけど
これはそんな簡単なものじゃない
Iphoneから流れていた曲が変わって
あの頃二人よく聞いた曲がかかる
黒いブラックコーヒーから上がる水蒸気がスクリーンになって
思い出が上映される

スーパーの袋の取っ手をお互いにひとつずつ掴んで歩いた帰り道

玄関先で笑って「いってらっしゃい」と手を振る君

最後に「サヨナラ」を言って別れた空港

天井にとりつけられたプロペラのファンみたいに色んな感情がまわっていて
気付けば時計の針も  
もう随分とまわっている
きっとこうしている間に地球もまわっていて
君を取り巻く環境も変わっている
その回転は恐ろしく速く
安易に手を突っ込んだりしたら腕を切り飛ばされてしまうだろう
それでもやっぱり取り戻したい物がある
ふてくされて寝転がっていたボールペンを起こして
インクに想いを託す
最近の近況を綴ったあと
後半には情けなく後悔の念を綴った
心細そうな便箋にカバーを着せた後
僕はコートを着て郵便局へ向かう
国際切手を貼られた茶色い封筒が敬礼をして米軍に突っ込んでいく若い特攻隊のように見えた

受付の女性が微笑んで封筒を奥の部屋へと持っていく

君が封を切って手紙を取り出すまで
僕の感情は茶色い封筒の中でうずくまっている









自由詩 Letter Copyright  2016-08-07 13:34:37
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