さけとばのよる
藤鈴呼
ほそく か細く 連なっていくかのような糸が
ゆっくりと 紡がれて
袂を 分かつかのように
空に 唾を 吐きかけた
突っ掛けも できず
すっ転ぶほどまでには
凍結も しておらず
この時期と いうのは
実に 曖昧だ
世間では もう
大掃除の 時期らしい
常軌を逸した 我等の正月は
今が 本番とばかりに
やれ 本榊だ
それ 南天だと
探し回る
我等は 犬
橇は 木製で 出来上がっておるので
奇声を上げることなぞ 許されませぬ
帰省する場所なんて 端からあろうもんと
おちゃらける
切っ先の鋭さばかりが 一流
張子の虎よりも
たゆたう光のほどを
吟味したい夜
上向きの光は
いつかの饒舌さを
彷彿させる
上目使いの 潤んだ瞳ばかりを
バッサリと
掻き切って やりたいのです
世間では
帰りたくないかのように
扱われている らしいのですよ
こんな あたくしにも
帰る家 ひとつぐらいは
あるんですがね
呟いた 星ひとつ
今宵の酒に 埋めて
歩き出す
オツマミは 鮭とば
ちびり ちびり
齧り付く位が
丁度 良い夜に
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