夏の雲
小谷りり
夏の雲
砂の山を作っては 崩れ 踏み潰されて何も言えず
部屋を散らかされ 怒りたくても ぶつける相手など
酒で酔っ払っては 足を滑らせ ひとり転んで
汚れた靴でとぼとぼ歩いて 人にぶつかっても謝れず
ダメな人間だとさげすむ前に
ひとりで線香花火をした
家の前なんかでやるから
夏に笑われたような気がした
あの白い塊はなんですかと人に問えば
おおかた、嘲笑されるのが普通だけども
あの白い塊はまるで自分を押し殺すような
鉄の塊そのものじゃありませんか
この蒸し暑い季節に
何度何度何度
声をあげ
泣いただろうか