黒と赤
ヒヤシンス


 雨の雫が涙のように乾いた私の頬を伝う。
 黒、もしくは赤の色彩の中に、そう、それは夜だ。
 魅惑的な静まりの中でガラスの心を持つ者は
 人知れず暗闇に安堵し、一時の安らぎを得るのだ。
 
 車の窓から正体不明の顔(それは私だ)が外界を覗いている。
 何者でもない自分の故郷を探してみるが、
 誰かのテールランプが眩しいからやめた。
 とにかく私は海と森の共通点を探すことにしよう。

 雨がしとしと降っている。
 車の中でコルトレーンとドビュッシーを同時に聴いている。
 祈りは感謝だ。
 もしかしたら私と似た者がいるかもしれない。

 朝はいまだ遠い。
 黒と赤を纏った夜に私は似た者と静かに話したい。
 この夜の感謝を忘れぬ者でいたい。
 明日への希望につながるように。 
 


自由詩 黒と赤 Copyright ヒヤシンス 2016-08-06 04:09:43
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