黒と赤
ヒヤシンス
雨の雫が涙のように乾いた私の頬を伝う。
黒、もしくは赤の色彩の中に、そう、それは夜だ。
魅惑的な静まりの中でガラスの心を持つ者は
人知れず暗闇に安堵し、一時の安らぎを得るのだ。
車の窓から正体不明の顔(それは私だ)が外界を覗いている。
何者でもない自分の故郷を探してみるが、
誰かのテールランプが眩しいからやめた。
とにかく私は海と森の共通点を探すことにしよう。
雨がしとしと降っている。
車の中でコルトレーンとドビュッシーを同時に聴いている。
祈りは感謝だ。
もしかしたら私と似た者がいるかもしれない。
朝はいまだ遠い。
黒と赤を纏った夜に私は似た者と静かに話したい。
この夜の感謝を忘れぬ者でいたい。
明日への希望につながるように。