ノート(はざま 歯車)
木立 悟






けだものに引きずられ
遠くも近くもないところへゆく
何かを諦めたような
朝と目が合う


布に覆われた空がぼそぼそとたなびき
まなじりは冷たく足は軽い
虫はおらず 雨が近い
灯は点滅し 雨が近い


何も映さず
地を駆ける鏡の群れ
巨大なひとつのまばたきとなり
空に風を放っている


境界の無いたましいを
けだものは境界に置いてゆく
裏返る鉛の目で
見つめつづける


雨後に降る灯
夜に満ちて
路を穿ち
光の頭を刺してゆく


無数のけだもののうちのひとりが
断崖の上で
はらわたの機械をこぼしてゆく
陽を 波を 曇を
虹色の血が越えてゆく




















自由詩 ノート(はざま 歯車) Copyright 木立 悟 2016-08-04 00:47:39
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
ノート