夏が走る
星丘涙
夏が走る
僕らを呑み込み
暑く 熱く 駆け抜ける
喜びも 悲しみも
痛みも 癒しも
憎しみも 憤りも
熱風の渦の中 混ざり合い
夏模様を描きながらスパークする
何かに酔っぱらい 熱にうなされ
蜃気楼の中 さまよい乱れる
現実なのか 非現実なのか 確かめる術もなく
ただひた走っている 汗も拭かず 息を切らし
皆 ただただ ひた走っている
何者かに憑つかれているのか
脅されているのか
ひと夏の夢の中を いや永遠の夏の中を
夢遊病者の様にひた走っている
栄誉を求め 地位を求め 金を求め
救いを求め 平和を求め 快楽を求め
いや何を求めているかはどうでもいいのだ
とにかく欲するままに 生きる為に 訳も解らず
この夏を 汗を流し 走り暮らしている
やがて初秋の風が吹けば
皆 夢から覚めるのだろう
懺悔したり
喜んだり
焦ったりして
正気を取り戻し
冬に向かい 途方に暮れるのだろう
それまでは この夏を走るのだ
夏の渦に呑まれ 巻かれ
夢を見続けるのだ
ひた走るのだ