ふたたびの青い扉
塔野夏子

ふたたびの青い扉
を開けると一瞬で模型となる街
のふちに腰かけている灰色の詩人
の帽子を奪ってゆく軽快な風
に揺れるかがやくデイジーの群れ
の上を舞う愁い顔の緑の天使
を忘れて立ち去るマントの男
が踏みしめてゆく青ざめた石畳
を転がる音符を閉じこめたビー玉
に見入る窓にもたれた少女
の髪に結ばれたリボンに化けた虹
について歌われた掠れたメロディー
にあわせて空で踊る雲
を見上げて微笑む奇術師
がたたずむねじれた橋
の下を流れる真珠色の川
に沿って幾重にも駆けてゆく少年
が夢見たプラチナの螺旋塔
から飛び立つ菫色の飛行船
から撒かれる無数の黒いビラ
が貼られた壁があるカフェー
で人を待つさびしげな青年
のポケットにある本から逃げ出す文字
が夜空に舞いあがって作る星座
を観測する紺色の目の天文学者
の飼っている銀色の猫
がすり抜けていったふたたびの青い扉




自由詩 ふたたびの青い扉 Copyright 塔野夏子 2016-08-01 10:43:46
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