ハピネス
かんな

朝起きる。
新聞配達のバイクがハーモニィを奏でて
ポストに投げ込まれる
合図はわたしをきちんとコーヒーへと導く。
隣でしっかり布団に収まる夫に
声をかけるとううーんとうめいて夢に戻ってしまったが、
息子がその上にのしかかった。
毎日にこうやって朝がきて、
私はコーヒーと息子の麦茶を用意する。
すこし怖いのだ。
しあわせは何かを怠ったとき、すばやく姿を消してしまう。
あなたもしあわせを想像してほしい。
わたしはいつも怯えている。
独りぼっちの絵の中にわたしが入り込んだように
抜け出せずに塗りつぶされるのを待つように
コーヒーを飲もう。
麦茶を飲もう。
ごくごくと喉を潤せば、仕事や家事や幼稚園を容易にこなすことができる。
風が強い今日に
太陽はどこかに木漏れ日を提供する。
わたしはやわらかな光を浴びてやっと安心する。
朝食の支度をしていると息子がパンをかじる、
かじったところには歯形というしあわせがついている。
またかじるとまた同じことが起こる。
息子は笑いながら美味しいと言って全部食べてしまう。
夫はゆったりと新聞を広げ、
時事についてあれやこれやと口にしている。
世の中とわたしの日常は
ほんとうに交わっているんだろうか。
わたしは考えてしまう。
息子のかじったあのパンが新聞のどこかから繋がっているのかを。


自由詩 ハピネス Copyright かんな 2016-08-01 09:41:56
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