水銀の涙 (未完)
043BLUE

 a.

睨み合う矮小

憎しみと欲望は
隔てられた割れ目の
隙間で歪曲された

輪ゴムの一面の憐憫を
その他の面の不実を

伸ばし
引き裂き
廃棄され

虚しさの
秩序の歴史を
捏造する


 b.

林檎の輪郭の
微かな震えを
なぞりながら

ろくろの上で
回り続ける
寥々たる老廃物は

くも膜のガード下で
燐酸カルシウムを
むさぼり食う

105号室の
狼狽する老婆は
少女のように
微笑みながら

虚しさの
秩序の歴史を
捏造する


 c.

ドアの隙間に
びっしりと貼りついた
藻類のような
腸のような 何か
によって固く
糊付けされた

虚しさの
秩序の歴史は

ここから発信され

ここで破綻する


 d.

ついに
輪ゴムの一面の
滑らかな路上で

流浪する一群の
行き先を失った
封印された真実の
歴史の詳細

は、劣化した
緑色の
輪ゴムによって
束ねられた

嘆きの海に
浸された
閉ざされたドアの

油ぎれの鍵穴
油ぎれの歴史

油ぎれの私は
コップ一杯の水銀を
飲み干した


 e.

ドアのパッキンは
嘆く

水銀の涙は
鍵穴に入り
錆が進行する

虚しさの
秩序の歴史の
進行と

シンクロしながら
浸蝕する


 f.

限りなく広がる
水銀の海原

水平線に浮遊する

月のような
卵細胞のような
生命体の

その心臓部
近辺で発光する
微かな光に向けて

私は蛾となり
飛び立つ

その生命体の
額の
ドアの
鍵穴に

刻まれた文字の
真実の

錆の赤さの
夕焼けが

捏造された
虚しさの
秩序の歴史の

最初の一日の
約半日分の
詳細である


自由詩 水銀の涙 (未完) Copyright 043BLUE 2005-02-27 18:03:54
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