飼い猫
坂本瞳子

俯せで眠る無防備な背中が大きくて
つい頬ずりをしてしまった

爪を立てたくなる衝動を
必死に抑えてみた

喉から流れ出た撫で声は
自らにも気色悪く
化物のそれとさえ思われた

瞬きを一度して
眼の色を変えてみる

横に一飛び
散歩に出掛ける

帰って来るまでには
皿に新しい水を注いでおいて
くれたまえよ


自由詩 飼い猫 Copyright 坂本瞳子 2016-07-29 23:19:36
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