風のつよい日
マチネ

いつの間にか私はすっかり健康になり
霧雨が降る夏の日に
じっとりとした汗をかくようになりました
決して集めることのできない水滴を
体に吸い付けて
はじき出して

感官としての人差し指を
もう長いこと
忘れていた
触れるための指であるはずの指を
その通りに使い
その上でなかったことにして

数限りなくある朝の形容を
隠喩を
換喩を
つづり続ける日記帳のようなものがあって
それは人差し指から始まっている
今日のような湿潤な日
振り払うことのできない、水と汗
そこから私達の言葉が生まれる

明日の県北部は晴れ
ところにより風のつよい日となりそうです

大通りの交差点で流れていた天気予報
ゆっくりと読み上げられる音声を
そのまま吸い取った人差し指が私の人差し指で
私のからだは、そんな夏の日にじっとりと汗をかき
とても健康になりました


自由詩 風のつよい日 Copyright マチネ 2016-07-28 01:50:37
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