切って縫う
DFW



夏の髪は濡れている


わたしの髪が揺れている
遠浅の海はそのなかで年老いていく
形態が機能に従い
それぞれの行為が所定の位置に置かれていく


気晴らしのような裁断の美しさは
それはそれとして分裂、いや放棄しながら
語りつくされないものの姿勢で縫製された
物乞いの上着のような夕空を
それぞれの面が最初の層に引かれ、めくれた空白の羽根となり
ワタリドリのように横断した


夏のうね曇にまでとどいた塔の貯水槽から
投与される
点滴 を 、
写実の
水粒を


稠密する不毛性の
また



推移しながら重ねられ
溢れながらも汲みあげられる
縫い針の限りのないインフォームドな投身


テーブルマナーの悪い静脈の影を仮どめしていた
マチ針が
はずれ
いましがた留置された
再生の胚芽に
いたり
疲れた子供たちと
まどろむ

比較的平らな円の角に寄りかたまり
まだ眠れずに夢みている


青い目の物静かな老女は
リメイクにはわりと向いた夕凪だと考えて
空をみあげる


ワタリドリたちが通りすぎた跡に重ねるハサミは傷のような矢印





自由詩 切って縫う Copyright DFW  2016-07-27 23:37:00
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