夏と雨の短詩・五編
ただのみきや

  温雨


雨に洗われた
針葉樹の隙間から顔を出し
ヒヨドリは不思議そうに首を傾げる
蟻の休日
うつろな目をした夏






        一緒くた


      傘骨が折れた
      煽られたのではない
      真向から打ち負かされたのだ
      もはや隔てるものは何もない
      雨・風・人 一緒くた






  幼稚園バス


幼稚園バスが坂を下りる
凸凹でちょっと揺れる
こどもらもちょっと揺れる
角をまあるくまがって行く





   
        ルリシジミ


      道端の紫陽花から
      花びらひとつ舞上り 
      小刻みに青く光を返しながら
      すばしこいステップ&ターン
      傍らをすり抜けた    
      四十万への軌跡






  朝から雨


日焼けした腕も脚を床に投げ出して
永劫のように一瞬のように
なにも考えず
――濡れて光る自転車
始まったばかりの夏休み
大人のニュースをつまみ食いする






         《夏と雨の短詩・五編:2016年7月27日》







自由詩 夏と雨の短詩・五編 Copyright ただのみきや 2016-07-27 18:53:02
notebook Home 戻る