あー
イシダユーリ

お前の喉を
つぶしたとしても
お前は
口をぱくぱくさして
なんか
言うんだろ
それを
誰かが
解読してくれんのを
ぼんやりして
待ってんだろ
からだが
穴の下で
ただ
突っ立っている
頭蓋骨の
ヒビを
とっくに埋めたのに
まだ
疼く
ひとりでは
生きていけない
子どもたちが
足元で
ひからびる


わたしたちは同じ種族だからお互いを踏みつぶして息の根を止め合うには
相当な痛みと時間の経過が必要です
機械や刃物を必要とするのは
わたしたちが選ぶ種族だから
将来裏切ることになる相手を
季節になぞらえて
選ぶため
 ヒトが嫌い
 とか
 言ってるよ
 ヒトが
  社会が嫌い
  とか
  言ってるよ
  人間が
   みんな死ねよ
   とか
   言ってるよ
   サルが


待ってるんだよ
ドライアイス
投げつけてよ
絶対に
おまえをもう一度
おなかの中になんか
いれてやらないし
鼓動を
やめないのなら
ことば
ぜんぶ
忘れ去るために
穴を
ふさごうね
肋骨を
内臓に沈ませようね
音を
聞くために
ご ぷ

液ならば
逃がしてあげようね
声を
ひとつも
落としてはだめだから
あたし
女の子だから
腕を
縛られることは
ないの
死んじゃあダメだよ
つぎつぎに
割れるね
なんて


 言ってるよ ひとが嫌い とか ひとが
 言ってるよ 男の子が嫌い とか 男の子が !
 言ってるよ ! 女の子が嫌い とか 女の子が


ずっと
待っていた
子どもをもたない
先端を
得ること
先端で
穴を抉ること
誰とも
交ることなく
目のない
みどりの
蠢きを
腕に抱くこと
わからなければならなかった
相当な痛みと
時間の経過が
必要であること
手を下すということには
相当な意思と
時間の合致が
必要であること
わからなければならなかった
わたしたちは
ただの
肉と骨ではなく
刻みつけられた
子ども

あることを


おまえ どこにいったのかな ずりずりと 逃げ出して いったのかな


幹だけになって
立ちすくむ
宇宙という
穴ぼこの
下で
列になって
ひとの頭ばかり
見えるけれど
順繰りに
叫ぶ
黙れ
黙れ
黙れ
黙れ
ああ
きれいな
生き埋めじゃないか
まったく
音を
なしていない


砂だけが
目の前の頭蓋に
あたる
決して
振り向かない
痛む顔を
それだけを
想像して
今日も
陽が
落ちる
そして
だれも
死なない




高橋は虎殺し 謙吾はライオン 山宮は 何を 殺したいの?




「                                   」


2009.7


自由詩 あー Copyright イシダユーリ 2016-07-27 16:12:39
notebook Home 戻る