君のことを書くのはこれでおしまいにする
かんな


ほんっとバカだったよな
羨ましいくらい自由で
でもなにかを抱えてて
時おり寂しい一面を覗かせてた
そういうところに弱かったんだ
遊んでいるようにみせて
誰より努力してて気づかせなくて
優しさをはき違える奴には
冷たい視線を浴びせていたけど
大切なひとを大切にするところ
そういうところが好きだった

*

夜中の散歩に付き合ってくれて
月が綺麗だなっていうから
夏目漱石的な告白かと思ったけど
もちろん勘違いであって
ただ満月の綺麗な夜だったね
公園のフェンスが互いの世界を
綺麗に区切ってくれてるみたいで
哀しくも安心していたよ
綺麗にも色々あるからわからないけど
互いの関係を綺麗なままに
しておきたかったなんてね

*

ホテルに二人で遊びに行ったね
わざわざデラックスルームを選んで
壁一面のディスプレイで
くだらない映像を見ていても
キングサイズのベッドの互いの
距離は大して縮まらなかった
風呂入るか?ていうから
いいけど?と答えたけれどね
裸を見せ合って
泡風呂できゃっきゃっしてさ
それでも抱き合わなかった互いの
気持ちが今ならわかる気がする
めんどうくさいってこと

*

私が病んで地元に戻ってから
君は帰省する度に
生存確認なって言って会っていたっけ
背景に見栄隠れする、なんだろう
彼女、とか恋人とか諸事情
私にはどうでもよかったよ
優しさがね、優しさがいたかったひどく
友だちとか言って
ホテルで遊んでセックスはしない
互いの諸事情により
あの頃真っ暗やみを歩く私の手を
軽く引っ張ってくれていたような君の手を
たぶん忘れないのだとおもう

*

実は数年がたって私も君も結婚して
パートナーができる、ていう話なんだ
笑っちゃうよなー
二人して結構平凡に結婚してしまう
互いにしあわせとかで
それを互いにしあわせとかだったりする

*

何でセックスしなかったんだろうなー
今なら話題に出来る
する機会がなかったよねーある意味
とかいって見せる
いやあの夜もあの夜もあの夜もあの頃
互いになにか抱えてて
抱きしめたいものが他にあったんだよ


ありがとう
そっと頬にキスをする
だから
君のことを書くのはこれでおしまいにする










自由詩 君のことを書くのはこれでおしまいにする Copyright かんな 2016-07-27 11:50:03
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