夏の日々
塔野夏子
夏になると
私の中の情熱が少年のかたちになって
駆け出す
迸る光と熱のただ中へと
緑かがやく丘の上で
積乱雲の巨塔を見あげ
四方から降りそそぐ蝉の声を
またそれらがふと止んだときの静寂を
その身体にふかぶかと浸透させ
また夜には
北に高く舞う白鳥から
南に低くうねる蠍まで
思いのままに銀河をたどり尽くし
けれどいちばん胸が高鳴るのは
午さがり ふいに空が重暗くなり
そして夕立の最初の一粒が
鋭く落ちてくる
その瞬間
そんな日々を少年はくりかえす
やがて秋の気配たちこめる頃
少し青年に近づいた面差しで
地平へと歩み去ってしまうその時まで
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夏について