火葬詩転生
ただのみきや

          草葉に風の足音
夏の光の深い底で焼かれる虫たち
夜に置き忘れられた
艶やかな目に乾いた夢が映り込む
生と死の歯車が柔らかく噛み合って
素早く回転する
  濃厚で豊満な匂い
姿の知れない鳥の絶叫
快楽と痛みを刻印した記憶を発火させる
道に野辺に白く 乾いた骨
ひとつ ひとつ 拾い集め
      切れ切れの死を繋ぐ
ひとつの瑞々しい肉体が蘇生する
顔のない純粋死体
蔓草覆う緑の海から立ち上がると
午後の光を背に押しとどめながら
帆のように空白を満たしている
        顔を描く
鮮烈な照り返しと危うい輪郭
影こそが実体だ
女はこちらを一瞥し
すぐに記号に解けた
    そうやってまた始まる
夜にはわたしも死んで水になるから
言葉の外から人として始めなければならない
繰り返される夏の遊戯まっかな
          西の空がいつまでも送り火



           《火葬詩転生:2016年7月20日》










自由詩 火葬詩転生 Copyright ただのみきや 2016-07-20 20:47:15
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