ゾンビの日光浴
阿ト理恵


わたくし、Eテレ2355で有名な考えるセイウチでございます。今日もプールでポーズとりながら回ってると、お客様が「きゃあ、見てぇ、セイウチのくせに哲学してるよ」って指さして笑うんですよ。まあ、もう慣れました。今日はなんだか顔色の悪いカップルがきたんですよ。なんにもしゃべらないで、じっと、わたくしを見てるんです。じりじり。真夏の太陽が容赦なくカップルを焼いているようで、熱中症にでもなってしまったのかしらと心配になりました。風が温度を少し下げる午後3時過ぎのこと、わたくし、おやつをいただいていたんです。どぼん。カップルがいきなり、プールに飛び込んだんです。それっきり、浮かんでこなくて、。でも、誰も騒がないんで、わたくしも、おやつを食べたあと、なにごともなかったように静かにプールを回る考えるセイウチをしてました。考えるセイウチとしては、このことについて考えてはみましたが、やはりセイウチなだけに、わかりませんでした。あなたのうちの扇風機が首をふるように。





自由詩 ゾンビの日光浴 Copyright 阿ト理恵 2016-07-19 22:29:34
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