おはよう
印あかり

今朝、サボテンを
ちょんと切って食べてみた
泣き腫らした目の下の
やわらかい、にくのあじがした

乳白色の空を
アラーム音が貫いた
悪魔が穏やかな寝息を立てている
レースの影が頬を泳いでいる

信号はずっと青で
磨かれた路面はちらちらと光った
見えない駅から
聞こえない電車の音

ひとつ、咳をした

このままワルツに背を向けて
熱っぽい鼻歌を歌う

おはよう。わたしの住む街
おはよう。わたしの好きな人
おはよう。

(おはよう)

サボテンの切り口から
ぷくりと透明な血が浮いた
夢中で舐めとっていたらいつの間にか
白い月は消えていた


自由詩 おはよう Copyright 印あかり 2016-07-16 11:05:41
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