海岸通り
レタス

海岸線に沿った国道を二人歩いた
何処まで続くのかおれは知らず
お前が指さす方向を
トボトボと歩いた

波濤に向かい立つ釣り人の釣果は
50㎝ほどの石鯛だった
豪勢な食卓を飾るだろう

お前は手首から噴き出す血液を止めるために
ステンレス製のボルトを締め付け
おれを誘う

何処まで歩けば良いのやら
お前は何も言わない

其処は小さな漁港のテトラポッドの裏側に
紅い暖簾の中華そば屋だった
客はみな
地元の漁師と
その家族だけで
よそ者は俺たちだけだった

お前は血が足りないので
レバニラ炒めとラーメン
俺は腹が減っていたので
ラーメン炒飯を注文した

やがて婆ちゃんが注文の品を運んできた
カツオとサバとアゴの出汁が薫る
ラーメンを運んできた
レバニラと炒飯はまだ来ない

俺とお前はラーメンに溺れそうになりながら
言葉もなく
丼に顔を突っ込み
ずるずるとソバを啜り
至福の午後を過ごした

いまはもうお前はいない


自由詩 海岸通り Copyright レタス 2016-07-08 18:35:36
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