海岸通り
レタス
海岸線に沿った国道を二人歩いた
何処まで続くのかおれは知らず
お前が指さす方向を
トボトボと歩いた
波濤に向かい立つ釣り人の釣果は
50㎝ほどの石鯛だった
豪勢な食卓を飾るだろう
お前は手首から噴き出す血液を止めるために
ステンレス製のボルトを締め付け
おれを誘う
何処まで歩けば良いのやら
お前は何も言わない
其処は小さな漁港のテトラポッドの裏側に
紅い暖簾の中華そば屋だった
客はみな
地元の漁師と
その家族だけで
よそ者は俺たちだけだった
お前は血が足りないので
レバニラ炒めとラーメン
俺は腹が減っていたので
ラーメン炒飯を注文した
やがて婆ちゃんが注文の品を運んできた
カツオとサバとアゴの出汁が薫る
ラーメンを運んできた
レバニラと炒飯はまだ来ない
俺とお前はラーメンに溺れそうになりながら
言葉もなく
丼に顔を突っ込み
ずるずるとソバを啜り
至福の午後を過ごした
いまはもうお前はいない