日付けようのない
乾 加津也

日付けようのない、濡れた手紙でも
生きていれば、きちんとした
差し出し方を思い出せるという意味の
薄さ

わたしの指の腹で縁どられた
限りない不透明(のりしろ)
できあいの
夏の日の明るさを少年に焼きつけたまま
汗の雨はうつ伏せまたままじゃないか
なじまない画用紙に層をなす
嘘じゃないか

それでもかならず色あせたのは
日取られた
白の
いまも優しいやさぐれかた
(色めく春を知らず)
指定されない
世界遺産の登頂から
先進医療技術は落下してしまえ
言葉を
言語体系を志操する針葉樹に
道をつくる
行政区
集配の箱が一つあって
場所より、時間より
たしかな距離が
小さきものの、はかなきものの
薄い
届け物なのです

誰かから誰かへ移ろう眠りを
死とかくな
完膚なき、までに
酔い痴れるな


自由詩 日付けようのない Copyright 乾 加津也 2016-07-08 00:03:20
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