流れる
ただのみきや

風が流れる
草木を揺らし花びらを散らし
風が流れる

雲が流れる
陰りを運び雨を降らせて
雲が流れる

水が流れる
岩を削り土を掘り下げる
水が流れる

人が流れる
道が整い街は発展し村は廃れる
人が流れる

金が流れる
人や物の値が上がっても貧乏だけは無くならない
金が流れる

物が流れる
無くても困らなかったものが必需品に変わる
物が流れる

きな臭い噂が流れる
それらしいデマが流れる
いろんなものが流行りまた廃れ繰り返す

いのちが流れる
結局誰もが死ぬ
いのちが流れる

時間が流れている
すべての流れの総元締め
時間が何もかも流してしまうから

流れないものを探し出そうと
流れないものを創り出そうと
流されまい流されまいと人は

己が流れ去った後にも残る
不動の礎を据えようとしたが
黄金の如く輝いたものも時代と共に寂れてしまう

流れ去ることを良しとした者もいた
大切なものは心にしっかり乗せて一緒に流れて往く
なにひとつ残そうとしない者たち

素麺が流れる
夏の暑い日 箸をすり抜けて
素麺が流れた

白く涼し気に




               《流れる:2016年7月6日》






自由詩 流れる Copyright ただのみきや 2016-07-06 21:55:27
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