桃たべる朝
田中修子
夏の夜に浮かび上がる
さそり座の心臓、火星
とうたっても
こちらの夜は星座もろくにみえやしなくて
夜空は地上に住む人の心を写す鏡だというなら
みやこのこころはどれほど滅んでいるのかしら
なんてね、そんなたやすい感情にとうとうと流されるだけ
だれでもできるもの、わたしは遡上するの
桃が季節になったから
お店の人に選び方を聞いたよ
「皮にてんてんと天の河をえがいているような
そんな模様が浮いているのが美味しいのですよ」
桃色の空に黄色いまだら
ジュースがしたたるあまいあまい天の川のくだものをかじり
ね、あなたのなかにも光の洪水を見るわたしがいるよ
しゃらしゃらと笹の葉が風におどり折り紙の飾りもの
短冊のお祈りは
織姫と彦星が逢えますように
数万年後には天図も変わる
気の長い恋をしているあなたたちが好き
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お題
「火、星、ジュース」