人魚少年(マーボーイ)
塔野夏子

夏はじめの潤んだ月夜の空は
どこかで海とつながりあうらしい
その空を唄うように泳いで
人魚少年マーボーイがこの窓辺にやってくる

真珠色の肌
うす緑とうす青を帯びた銀色の鱗
無邪気な瞳

人魚姫リトルマーメイドは人間に恋をして
声とひきかえに人間の姿を手に入れたけれど
人間が人魚になる魔法はあるのか
あるとしたら何をひきかえに

もし人魚になれたなら
夏はじめの潤んだ月夜の空を
人魚少年マーボーイと二重唱のように泳いでゆけたなら
夜明けには泡となって消えてもかまわない

などと夢みてしまうことを
その無邪気な瞳に
けして告げはしないけれど




自由詩 人魚少年(マーボーイ) Copyright 塔野夏子 2016-07-05 21:55:22
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