満月の物語
星丘涙

むかしむかし 暗黒の世界に 満月が生まれた
青白く闇を照らし 人は詩を詠むようになった
狼はその光に 遠吠えながら 仲間を呼んだ
満月の夜には 事件が起こり 語り継がれた

むかしむかし 乙女は月夜に 湖で泳いだ
月光に照らされて 輝く黒い髪を梳かした
男は誘われながら 蒼い世界に 目を凝らした
虫の音が流れ 乙女も唄い カエルは笑う

千切れ雲が流れ 満月が隠れても
暗闇に 一瞬の静寂が 訪れるだけ
満月の物語は 月の乙女の接吻

むかしむかし ススキが揺れる晩 お団子を供えた
青白いウサギが来て 満月をかじり泣き出した
月は欠けたり満ちたり 詩詠みの乙女 瞼を閉じる
月の残像を 見つめながら 輝きを増す

千切れ雲が流れ 満月が隠れても
暗闇に 一瞬の静寂が 訪れるだけ
満月の物語は 月の乙女の接吻 

満月は今も輝く 僕と君を青白く照らし
君は詩を詠む 僕は尺八を吹きながら
満月の物語を 思い出している


自由詩 満月の物語 Copyright 星丘涙 2016-07-04 22:48:49
notebook Home