真夏の夜の熱
坂本瞳子
真夏日の暑さが続く中の発熱は厄介で
自らの体温と外気がほぼ同じというのは
得も言われぬ不思議な感覚を覚える
体温計の目盛が三八度を越えると
自分はいかにも重病人になった気分で
悲劇の主人公よろしく
ただただ背中に温もりを感じ
滲み出る汗を厭わしくも有りがたくも思う
ぼーっとする感覚に襲われながらも
あ゛ーっと声を出してみたり
氷枕に極上の悦びを覚え
良く冷えた桃の缶詰こそが
この世で最高の馳走となる
もうこのまま朽ちてもいいのではないかとさえ
汗をかきながらタオルケットに包まって悶絶し
今宵も熱帯夜にうなされる