世情
レタス

化石の森の時計塔
ぼくはここまで来てしまったんだ
青白い大きな蛾がクヌギの蜜を舐めている
静かな夜の帳がこの胸に食い込んで
少年期の動悸を想い出させる
その頃は
当たり前だったおでんの屋台
チャルメラ…
保健所や警察に取り締まれた
あの味が懐かしい
もうこの夜には何もない
清潔すぎる
空気はあまりにも透明すぎて
言葉がなくなってしまうのだ
ほんの少しの濁りも許さない社会が大手を揮う
彼らは少数派を排除し
煙草も許さず
税金ばかりだけを奪って
貧乏人は吸うなと言う
彼らの正体は甘いフルーツに巣くう
毛虫のようなものだった



自由詩 世情 Copyright レタス 2016-07-01 21:54:33
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