くぼみ
ふるる

君のそろえた手のひらのくぼみに湖が
あるなら
ちょうど夜が明けて霧も晴れてきて
青い山々がすっかり見えるだろう

僕は湖畔に寝そべって
君に捧げる歌を作る
君がふっと息を吹きかけるだけで
さざ波が立ち
魚が跳ねる

そういう日曜の午後
君のそろえた手のひらのくぼみには
何かのプリズム反射でできた小さな虹がおさまっていて
ほら、見て、
と君は喜んでいた

虹ってなんで
人を喜ばせるのかな
きれいだから
はかないから
それもそうだけど
虹があるってことはそこに
光があって
許されているから
と思う

君のそろえた手のひらのくぼみに卵が
あるなら
コツコツと叩く音が聞こえるだろう
新しい世界への自信に満ちた雛の

僕は見守りながら
雛につける名前を考える
君がふっと息を吹きかけるだけで
殻が割れて
鳴き声が聞こえる

そういう日曜の午後
君のそろえた手のひらのくぼみには
洗ったばかりのさくらんぼがつやつやしていて
ほら、見て、
と君は喜んでいた




自由詩 くぼみ Copyright ふるる 2016-07-01 15:15:52
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