森
星丘涙
微細な雨粒に濡れ
その森へと足を踏み入れる
目を凝らしさらに進む
身も心も癒されてゆく気分だ
コウモリが空を舞いとび
草むらで山鳩が鳴いている
くるくると回る空を見上げ
幻想の世界へと迷い込む
白い服の少女が手招く
気が付くと古い井戸の底
鬼の様な私の顔が映る
私は私に怯え震えていると
少女がなおも手招きをする
気が付くと私ひとりきり
少女は消えてしまった
迷い込んだその森は
私を飲み込み
幻想世界の中を
私はよたよたと歩く
烏が鳴いている
私は死んでしまったのか?
死も生も区別のつかぬまま
歩き続ける
森の出口らしき世界が広がり
何時ものコンビニの店員が
「いらっしゃいませ」と声をかける
安堵のため息をつき
ビールを買って店を出た
目の前に森があった