まばたきの振動
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きみがわたしじゃないってことをいまのいままでわすれてました


今日雨が始まった
冷たくなった指先をいたわる、握り締める、げんこつ
ためいきも残り少な
そしてずっと泣かないまま
明日の昨日にはもう戻ってこれない
夕焼けの炎消し、星のすべて流し、
花のにおいも咳払いも隠した
明日の昨日にはもう戻ってこれないよ
どうしてもこんなにも遠い


ほんとうを見せてくれたからありがとう
それでいてねえきみは
なんてなんてやわらかいんだろ
わたしはぐっときみに埋もれて
深く深く包まれたと思ったの
だけど
きみはやわらかくって
どうしてもきみの中には入れてくれないんだね
境界線はぺこり折れても
きみはへこむだけで
どうしてもこんなにも遠い


今日の明日には地球は止まる
そのとききみは空へとぶかな
きみの声のこもり方
きみの髪のうねり方
きみの指の曲がり方
きみの肩の下がり方
きみの唇のかおり方
だれか、だれか、
だれも、
覚えててくれないんだよ
冷たい指の先の固い爪が手のひらにささるよ
こんなとき
ぎゅっと握った両手を
きみがやわらかくなぞってくれたなら
うつむけば水溜りに浸かったスニーカー
あおむけば顔に穴を開けそうな雨粒
ふりむけばだれもかれもきみじゃないし
まえをむいても焦点が合わない
動けないよ
動けないよ
どうしてもこんなにも遠いよ



きみがわたしじゃないってことをいまのいままでわすれてました





自由詩 まばたきの振動 Copyright ________ 2005-02-26 17:53:09
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