サープラス
DFW


人数合わせで呼ばれたコンパだった
見計らうように薄着になる女の子たちの肌がまぶしかった
そのときだけのLINE交換
誰が注文したのか分からない烏賊のお刺身が手をつけられずに乾いていった


帰り道のシャッター通り、タギングに気を取られて
通販で買ったガウチョパンツを立て看板に引っかけたとき
段ボールのなかから世界を支配してる仔猫にみられた
股関節と膝と足首を曲げて腰を落とし
指先を枝分かれた柔毛の空洞に複合させて
猫アレルギーだけど抱きあげて慈しんだ
コンパでした愛想笑いや相槌みたいな誤魔化しはいらない
仔猫が柔らかい爪を私の胸に立てて身悶える
私はあらかじめ承認されていた
だから決定的に慈しむ
閉鎖したシャッターが風で音をたてている
私は何処かの奥底で感じる
二つの世界のギャップがたった一つの動作で埋まろうとするのを
肝心なのは現在で
その現在というものをアレンジする
世界は運ばれながら影響しあっている

投函者のいないポスト
電車に揺られて眠る母
午後の点滅信号

私はこの仔猫をさらう
こっそり 完璧にさらう
私が食わせて大きくする
ペトロニウスと名付ける
鎖された街ですみやかに命名はなる
ペトちゃんと呼ぶ
私たちは誰の手下にもなってはならない

鼻水とくしゃみ
未発達な声を、渦を、毛玉を共有した硬い夜風の配合
しばらく私は月を見上げて力を強める
私は決していい者ではない
私はおそらくわる者の側にいる
私は低い
私は今一度、重心を確かめる
私は軸になる
私はきっと選ばれた
だから私は私の行動がいつか私をおとしめることを恐れない
ペトちゃんの姿態が捩れる
小刻みに振動するペトちゃんを白いブラウスで包む

私はこれから果たすべきことを果たす準備をする
起こすべきアクションに着手する
私は猫アレルギーの耐性を獲得する
もしくは出来る限りの免疫を確保して反応を低減させる
新しい世界を切り開く武器は現実のなかに求めるべきだ

まだ覚えている
楽観は真の精神的勇気だと
そして私たちは越境する
私たちの目の前で一つの世界が誕生する
世界は私たちのなかで呼吸を始める

世界は真剣だ
怖いくらいに真剣だ

ペトちゃんの複雑な耳のくぼみに優しい匂いが溜まっている
風がそこに舞う
風はいつも何処かに舞う
ライトアップされたトラス構造のタワーが遠くにそびえたっている
シャッターストリートを背に高速道路の分岐エリアがある
プノンペンの猫もきっと走ってる

私たちは身を寄せあい点滅する信号をくぐり
かゆい目でもう一度
星がまばらな夜空を仰いで
きれいに放心した

breath&move

すってすってはいて
慣れない歩調が分散する影を追い抜いて
行きおくれた私はこうしてたまに行きすぎる
風が夜空を揺らしてる




自由詩 サープラス Copyright DFW  2016-06-27 13:04:56
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