天には水 地には白
木立 悟






青空に噴き上がる
虹色の水柱
空をゆくものから
落ちてくる何か


午後の曇の下
少しだけ歪んだ時間に
終わった後の祭りが映る
誰もいない径を
どこまでも揺れている


溶けるように昇りひろがり
うすくうすく晴れてゆく
霧雨の手のなか
朝と夜をかきまぜる


雪山の前で
鳥が光を待っている
遠くで波が
ひとつひるがえる


水たまりの陽を追い
ひとりはぐれた径
枯草のひとつひとつが
空の声を見つめていた


八つの頭が
北東を視て動かない
紙に覆われた壁のむこう
にじみかがやくひとつの星


雨を動かす心から
粗末な瓶へ注がれるもの
幾度刺しても刺しても刺しても
貫くことのできぬもの


常に建物のなかで繰り返される
見たことのない灯し火たち
蝋にかためられたひとつの指
次の季節へ連れてゆく指


吹雪の足跡を
陽が静かに照らしている
曇の声 虹の声
原に落ちては紋をつくる





















自由詩 天には水 地には白 Copyright 木立 悟 2016-06-21 22:53:46
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