心の膿
ヒヤシンス


 キャンバスいっぱいに塗りたくられた真っ赤な背景に
 ピエロの肖像画が悲しい瞳を私に向ける。
 有無を言わさぬその迫力に思わず目を背ける。
 その時私はやましいのだ。

 そのほとんどが直線で描かれているその絵画は
 怒りなのか、それを通り越した悲しみなのか。
 すべての人に向けられているはずのその瞳は
 今この瞬間だけは私一人に向けられている。

 自己肯定できない私は恐ろしい。
 自己否定もろくに出来ない私は
 熟したトマトをその絵画に投げつける。

 怒りだ、怒りが足りない。
 真っ赤に染まったキャンバスの奥から悲しみの瞳が覗く。
 そして私は行為によって心奥に溜まった膿を吐き出すのだ。


自由詩 心の膿 Copyright ヒヤシンス 2016-06-18 00:46:27
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