黒い骨
あおい満月
鏡に映ったあなたの胸のなかに、
黒い竜が宿る。
黒い竜はその心臓のなかで増殖し、
血液の海を泳いでいく。
あなたが誰かと手を繋ぐあるいは、
身体を交わす、
黒い竜は毛穴から汗に混じり、
誰かの体内に浸入する。
あなたから誰かへ、
誰かからまた誰かへ、
黒い竜は空間を泳ぎ、
世界へ浸入していく。
*
あなたはことばを吐くほどに、
世界を壊しては構築する。
破壊と構築を繰り返して、
誰のものでもないひとつの海をつくる。
その海のなかには、
おびただしいほどの、
黒い竜が犇めいている。
赤い息を吐きながら竜たちは誰かを待つ
**
(すごいいきものたちだね)
誰かが海を眺めながら呻く。
あまり近づかない方がいいわ。
あなたは促す。竜が誰かを睨む。
刹那、竜は海から飛び出し、
誰かの手に噛みつく。
うめき声と鮮血が、
飛び散ったのは同じだった。
そして誰かの顔も黒くなり、
竜になった。
恐ろしい竜に。
竜はあなたにかぶりつき、
あなたの骨を黒く食い潰している。