黒い骨
あおい満月

鏡に映ったあなたの胸のなかに、
黒い竜が宿る。
黒い竜はその心臓のなかで増殖し、
血液の海を泳いでいく。

あなたが誰かと手を繋ぐあるいは、
身体を交わす、
黒い竜は毛穴から汗に混じり、
誰かの体内に浸入する。

あなたから誰かへ、
誰かからまた誰かへ、
黒い竜は空間を泳ぎ、
世界へ浸入していく。

*

あなたはことばを吐くほどに、
世界を壊しては構築する。
破壊と構築を繰り返して、
誰のものでもないひとつの海をつくる。

その海のなかには、
おびただしいほどの、
黒い竜が犇めいている。
赤い息を吐きながら竜たちは誰かを待つ

**

(すごいいきものたちだね)
誰かが海を眺めながら呻く。
あまり近づかない方がいいわ。
あなたは促す。竜が誰かを睨む。

刹那、竜は海から飛び出し、
誰かの手に噛みつく。
うめき声と鮮血が、
飛び散ったのは同じだった。

そして誰かの顔も黒くなり、
竜になった。
恐ろしい竜に。
竜はあなたにかぶりつき、
あなたの骨を黒く食い潰している。



自由詩 黒い骨 Copyright あおい満月 2016-06-15 20:58:53
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