遊泳禁止区域
佐々宝砂
白い波に足をひたして
海に走り込もうとするこどもをつかまえる
波に洗われる砂のうえ
何かの記念の石碑みたいに
ぽつんと残される丸い石
背の立たない輝く水に浮かび
ようやく息を継ぎながら
ずんずん遠くなる岸をみていた
あの記憶は
まだふくらはぎのあたりに残っている
誰が招くのか
何が招くのか
遊泳禁止区域の看板の下
忘れられたまんまのサンダル
干からびたカジメ
へこんだペットボトル
ツメタガイが穴を開けた二枚貝
さほど美しくもない砂浜で
わたしたちは確かに何者かに
招かれていることを悟りながら
わたしはやっぱり
海に走り込もうとするこどもをつかまえる