アネモネの詩 for Q
もっぷ

そのまなざしは父親には赦された
母親は女の子だったから赦せなかった
のだろう(自らへの)失意と憤り

 * * *

旅立ちたかったのは
なみだの源泉へだった
そこが故郷なのだと覚え
故に初恋と言い得るほどに
焦がれる存在へと育まれ
だから靴の紐をも結び
白旗の全てを燃べて

 * * *

ついに不意打ちのなみだの夜 その
ひとつぶは 開いてあった手帳の
白い色彩だけのページに落ちる
三つ編みの少女はそこまでを
昨日と決め髪を解放すると
私 になって日日を見つめる
鏡の彼女もいまだ泣いているし
いっそ靴など脱ぎ捨ててはどうか
ついに悟った母性からの拒絶に惑い
すこしだけおとなの匂いを萌しながら
あきらめてこども部屋への階段をのぼる

夢のなかで父さんを追いかける
母さんの名を忘れ忘れながら
夢のなかで私はどこまでも
、あした目覚めて椅子を喪い弔う
私は泣く あの日は可逆だと信じて
(かん高く割れる音)
いない、信じてはいなかった私を
映すものは惜しみなくて その、

訪れたあたらしいなみだの朝 その
ひとつぶが てのひらのうえで
ひかり かがやき それは



自由詩 アネモネの詩 for Q Copyright もっぷ 2016-06-12 23:19:18
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