opus

森の中の開けた場所
鬱蒼と繁る樹々の狭間
日の光が注ぐ
その中心に
湖が鎮座している

石を投げる
水面に波紋が広がる
風の音が聞こえる
樹々がさざめく
鳥の声が聞こえる
鹿の足音
耳の後ろの血液の音

真っ白の顔をしたピエロ
そこに模様はない
「くだらないなぁ」
薄ら笑い
「どうかしている」
右頬に掌をあてる
「酔っている」

夜が来ると
湖に星が浮かぶ
ゆらゆらと
揺れる水面で
星が踊る

skeeter davisの
the end of the worldを
口ずさむ
改めていい曲だなぁ
と思う

僕は歩を進め
湖の中に入っていく
湖は意外と深い
足から膝へ
膝から腰へ
腰から肩へ
肩から頭の先へ

ぷくぷくと
空気が口の端から漏れる
月明かりに照らされて
底がぼんやりと見える
ゆらゆらと揺れる水草
そろそろと泳ぐ淡水魚
キラキラと光るの金色のブローチ
薄汚れた人形

空気が出切ると後には
息苦しさ
じっと耐えると
体が痺れてきて
何もわからなくなる
あぁ、やっと終わるんだ

ふと、
体に痛みとと重みがかかり
水面へ
ぐいと引っ張られ
地面に転がされる
何だと思うと
そこには巨大な熊

恐怖
感じた瞬間に
世界がぐるぐると回りながら
移動する

止まって
視界が定まると
そこには頭を失った僕の体と
それを貪る小熊
傍で親熊がそれを見守る

ピエロが目の前で
僕に言う
「少しはマシになったよ。
まぁ、それでも十分くだらないなぁ。」


自由詩Copyright opus 2016-06-12 21:59:42
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