あおい満月

鏡に映る素肌には、
夥しいほどの、
何かに食いちぎられた後が
白い目をして睨んでいる。
互いの血肉を喰らい合うことこそが
真実の愛だと信じていたあの頃は、
あの日から生まれた私の世界は、
斬新さというヴェールを纏い、
夜に赤い花を咲かせた。

一人残された今は、
ただ、
いたわりあう優しさが欲しい。
この腕を抱きしめてくれる、
懐かしい約束を探して、
一歩ずつあなたに会いに行こう。

壊れ続けた日々も悪くはない、
たったひとつの願いのために、
すべてをなげうった思い出も、
見守るすべてに嘘をついた、
さわれるものすべてに刃をたてた、
それでも欲しかった幻。
でもすべて終わった幻。

あの日に帰りたいなんて、
思わないけれど、
本当の優しさを取り戻すために、
もう一度真っ直ぐに生きてみたい。

もうすぐ出会える、
私を待っているあの腕に、
抱き上げてくれたなら、
迷わずに言う。
ただいまと、
約束の鍵を手渡すために。

急な坂道に咲く桜の、
花弁で霞むあの向こう側に、
あなたがいる、
走り出す、
砂利に躓いて転んだ、
膝小僧から流れた血が、
今はすごくあたたかくて、
私は笑みさえこぼれてくる。



※過去詩です。


自由詩Copyright あおい満月 2016-06-12 16:37:32
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